「肘以外」の使い過ぎによっても筋膜の機能は障害される
前回のコラム「テニス肘の原因である筋膜の硬さの正体とは?①」では、筋膜の構造についてと、筋膜の硬さのメカニズムについてお伝えしました。
テニス肘の原因である筋膜の硬さというのは2つの過程により発生します。
それは「コラーゲンの柔軟性の低下」と「ヒアルロン酸の粘り化」です。
今回のコラムでは2つ目の「ヒアルロン酸の粘り化」についてお伝えします。
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②ヒアルロン酸の粘り化
筋膜はコラーゲンの膜が3層に重なっていて、それぞれの層の間にはヒアルロン酸の層があります。
ヒアルロン酸の役割は潤滑油のような作用で、3層のコラーゲン膜が滑らかに滑るように存在しています。
このヒアルロン酸は通常であればサラサラとしていますが、次の2つの原因によってその粘度が高くなり滑りが悪くなってしまいます。
1つ目の原因は身体の使い過ぎ(オーバーユース)です。
これはスポーツをやられている方に多く見られますが、そうでない方も日常や仕事上で繰り返し行う動きがあると、使い過ぎとなる可能性があります。
人は筋肉を収縮させるのにエネルギーを必要とします。
通常であればブドウ糖(グルコース)を代謝してエネルギーを産生しますが、エネルギーが出来た後のブドウ糖は乳酸という物質に変わります。
この乳酸がヒアルロン酸の粘度に影響を与えます。
乳酸は酸とつくだけあり、酸性の物質です。
筋肉の使いすごいによって乳酸が蓄積すると、筋膜の酸性度が強くなります(pHが低下する)。
実はヒアルロン酸は酸性の状況下に置かれると、その粘度が増します。
ですので乳酸が蓄積してヒアルロン酸が酸性の状況に置かれる事で、粘度が増え滑りが悪くなってしまいます。
2つ目の原因は不動によるものです。
前回のコラムでは、筋膜を伸ばせない(不動)と筋膜のコラーゲンの柔軟性が低下して筋膜が硬くなるとお伝えしました。
しかし実はそれだけでなく不動によってコラーゲンの柔軟性の低下だけでなく、ヒアルロン酸の粘度も増します。
ダブルで筋膜の滑りが悪くなるという事です。
このようなメカニズムにより、過用による乳酸の蓄積(酸性化)と不動によってヒアルロン酸の粘度が増し、筋膜の滑りを妨げます。
このように筋膜は①コラーゲンの柔軟性の低下、②潤滑油であるヒアルロン酸の粘り化によって筋膜の硬さを引き起こします。
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筋膜調整とは、筋膜に何を起こしているのか?
では最後に、筋膜調整では実際に筋膜に対してどのような変化を起こしているかを説明していきます。
筋膜調整では硬くなった筋膜に対して指や肘などを使ってスライドさせ、圧と摩擦を一定時間加えます。
そうする事で筋膜に一定時間、熱刺激と機械的ストレスを与えます。
するとヒアルロン酸の粘度が下がるためサラサラな状態になり、筋膜の滑りが元に戻ります。
また外から手によって筋膜を物理的に動かすことで、密集してしまったコラーゲン膜をほぐして隙間を作り、本来隙間にあった水分も取り戻します。
そうすることで筋膜の柔軟性が回復します。
これが筋膜調整によって筋膜に起こる変化です。
筋膜調整は最初はとても痛みを伴います。
しかしコラーゲンの柔軟性とヒアルロン酸の粘度が改善すると、筋膜の滑走性と柔軟性が正常に戻り、急に痛みが無くなります。
筋膜が調整された瞬間です。
筋膜調整ははっきり言うとかなり痛いです。筋肉痛も出ます。
でも回復過程において炎症反応は必ず必要なんです。
筋膜にしっかり炎症反応を起こさないような軽めの治療や骨格矯正などは対症療法であり、すぐに戻ってしまうその場限りの治療なんです。
テニス肘の治療を受けるに当たって、現在筋膜がどういう状態にあって、どういう事をすることで、どのような変化が起こるのか。
そしてそれがテニス肘の改善にどう影響を与えるのか。
これまで数多くの経験上、このような事を少しでもご理解頂けると効果や身体の変化をしっかり感じる事ができるため、治療効果にも歴然とした差が出てきます。
東京世田谷区のテニス肘専門筋膜専門整体 三軒茶屋α整体院
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