捻挫や半月板損傷、骨折などのケガを除いて、痛みの原因は「筋膜」の歪みにあります。
使い過ぎ、炎症、フォームが悪い、可動域が悪い、筋力が少ない、、、痛みの原因として皆さんもこう言われているかもしれません。
しかしこれらは全て筋膜の影響を受けた「結果」でしかなく、「根本的な原因」ではないんです。
筋膜の機能はもうお伝えしましたが、筋膜には筋肉の伸び縮みのタイミングやその強さ、関節の動きや位置の感覚を適切にする働きがあります。
ある要因によって筋膜が硬く歪んでしまうと、これらの機能が妨げられます。
つまり筋肉の伸び縮みのタイミングがズレたり、筋肉の出力が落ちたり、関節の感覚にズレが生じます。
するとタイミングがズレるために、関節や筋肉のある一部分に過剰な負荷がかかり、その状態で「使い過ぎ」るとその部分に「炎症」が起きます。
骨や関節を動かしたり適切な位置に保つ役割のある筋肉がアンバランスな状態になるため、「フォームが悪く」なったり、「可動域が悪く」なります。
筋肉の伸び縮みの強さの調整が効かなくなるため、「筋力が少ない」ように見えてしまいます。
このように全ては筋膜の歪みよる「結果」なのです。
では痛みが起こるメカニズムは何でしょうか?
これも少しお伝えしましたが、ある部分に過剰な負荷がかかると、その部分の筋膜にも歪みが起こります。
そうするとその筋膜に埋め込まれている痛みのセンサーが「誤作動」を起こし、痛みが生じます。
これが痛みの原因なんです。
だから筋膜の歪みを解消しない限り、痛みは改善しないばかりか、フォームもどんどん悪くなり、パフォーマンスも落ちてきてしまいます。
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【患部とは離れた部分の治療が必要】
痛みの解消には筋膜への治療が必要となります。
しかし実際には痛みのある患部には原因はありません。
筋膜は全身に広がっていて、全て連結していますが、ある部分にできた筋膜の歪みによって、その歪みが筋膜のバランスを崩し、全身に歪みを広げてしまいます。
その歪みの広がりが最終的に患部の筋膜を歪ませて、痛みを引き起こしているんです。
例えば今は右肘が痛いけど、数年前に実は右肩が痛かった、でも気づいたら治ってた、というような方もいるかもしれません。
でもこれは右肩が治ったわけではなく、右肩からさらに肘まで筋膜の歪みが広がった結果、右肩の痛みは無くなり、肘の痛みになった、というメカニズムです。
これが数年、十数年かけて起こる事も稀ではありません。
このように今ある痛みは、過去の筋膜の歪みが広がってきたために起こっているものなので、大元にある歪みを解消せず、患部ばかり治療していても、また歪みが広がって痛みが再発してしまいます。
そのため、大元の歪みがどこにあるかを丁寧に探り出し治療していく事が、根本的な解決には必要なんです。
当院では問診の時に、過去にあった痛みの事、そして今1番辛い痛み以外の部分に起きている痛みについても詳しく聞きますが、それはどのように筋膜の歪みが広がってきたのかを探るためなんです。
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【筋膜が歪む原因とは】
ではその大元の歪みはどうしてできてしまうのでしょうか?
大きな要因は3つあります。
①不動(筋膜を動かさない、動かせない状況)
②損傷(筋膜が傷つく)
③内臓の不調(内臓の筋膜からの代償)
と言った原因に分けられます。
これらについて一つずつ説明して行きたいと思います。
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①不動
不動とは文字通り「動かさない」事が原因で、筋膜に歪みが生じてしまうケースです。
筋膜は動かされない(=伸ばされない)期間が続くと、筋膜の中の水分が飛んでしまい、硬くなってしまいます。
これが筋膜の歪みの原因となります。
具体的には、骨折や重度の捻挫などによって、ギプス固定やサポーター、テーピングなどで長期間固定してた事のある部分の筋膜は、歪みがある可能性があります。
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②損傷
骨折や突き指、靭帯損傷、半月板損傷、繰り返される捻挫など様々なケガ(外傷)が起こると、その付近の筋膜も傷つき硬くなってしまいます。
そのため、過去にそのような事があった部分の筋膜には歪みがある可能性があります。
損傷には繰り返される衝撃も含まれます。
例えば野球のキャッチャーで毎日豪速球をキャッチングする事で、親指の付け根に衝撃が加わり、その部分の筋膜が損傷し、歪みが生じる事もあります。
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③内臓の不調
内臓も筋膜で包まれていて、すべての内臓が筋膜によって連結しています。
そして内臓の筋膜は体表面の筋膜とも連結しています。
内臓の不調(内科的な不調)があると、内臓の筋膜に歪みを生じます。
その歪みが体表面の筋膜に広がって筋肉の筋膜を歪ませてしまう事も多く見られます。
その結果、痛みが生じます。
内臓の不調が原因の場合、筋膜の歪みが広範囲に広がっており、痛みの解消に回数がかかる事が多いです。
特徴としては、身体の左右両側に症状がある(あるいは今は片方だけだが、過去に反対側にもあった)、体幹部で左右両側に筋膜の歪みがあるなどが挙げられます。
例えば両膝の痛みがあるとか、今は右肘が痛いが数年前に左肩痛もあった、などのケースです。
具体的な内臓の不調(内科的な疾患)は、
1)眼精疲労・ドライアイ・耳鳴り・難聴・めまい・ふらつき・中耳炎や外耳炎・副鼻腔炎・鼻詰まり・その他眼耳鼻の不調
2)喘息・気管支炎・その他呼吸器系の不調
3)下痢・便秘・ガスが溜まる・胃もたれ・逆流性食道炎・胃腸炎・その他消化器系の不調
4)高血圧・低血圧・不整脈・頻脈・その他心臓血管系の不調
5)腎炎・膀胱炎・頻尿・尿もれ・排尿時痛・その他泌尿器系の不調
6)甲状腺機能亢進や低下症・月経痛・子宮内膜症・子宮筋腫・前立腺肥大・勃起不全・糖尿病・その他生殖器系やホルモン系の不調
7)貧血・白血球数の異常・その他血液の異常
これらは診断がついているような疾患から、何となく続いている不調まで含まれます。
このような不調が過去にあった場合、全身に筋膜の歪みが広がっている可能性があります。
以上①〜③に当てはまる項目が過去にあった場合、その辺りの筋膜が根本的な原因となっている可能性が高いです。
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【どうやって痛みを解消するのか?】
問診・触診を通して原因部位が分かったとして、その後はどのように痛みを解消していくのでしょうか?
筋膜の歪みと硬さは「熱刺激」と「物理的な刺激」の両方が揃った時にほぐされます。
そのため治療ポイントに肘や指を置いて、少し圧迫し筋膜へ到達させます。
その深さのまま筋膜を「こする」ように肘や指をスライドさせます。
こする事で摩擦熱と物理的刺激を筋膜に与えてほぐします。
ほぐれてくるとこすっている部分の痛みが無くなります。それが一つのサインです。
ただ一方向はほぐれても違う方向にこするとまだ歪みと硬さが残っている事がありますので、「✳︎」の記号のように上下左右斜めなど全方向にこすって、全ての歪みと硬さを取ります。
そのため1ヶ所につき3〜6分くらいかかります。
まれに10分くらいかかる事もあります。
一回の治療ではおよそ5〜8ポイントの筋膜の歪みを解消します。
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