腱鞘炎の原因は筋膜にある
これまでのコラムでもお伝えして来ましたが、一般的に考えられている腱鞘炎の原因は指や手首の使い過ぎによる、腱や腱鞘の炎症とされてきました。
そのため第一の治療は安静や固定(もはや治療とは言えませんが、、、)、
次に炎症の起きている腱や腱鞘に対する消炎鎮痛(主に整形外科での治療)、
そして親指や手首の動きに関わる筋肉の緊張緩和(鍼灸や整体での治療)などが行われています。
しかしそれでは一時的に良くなるけど使うとすぐに戻ってしまう程度か、あるいはなかなか痛みが取れない事もしばしばあります。
再発も多く見られます。
なぜなら真の原因は腱や腱鞘には無く、筋膜にあるからで、筋膜に介入しない事には腱鞘炎は治りません。
筋膜に歪みが起こると、筋膜に埋め込まれている痛みのセンサーが異常を起こし、痛みを引き起こします。
そのため筋膜の歪みを解消し、痛みのセンサーを正常化させる事が、腱鞘炎治療で最も重要な事になります。
ではどういう事がきっかけでその筋膜に歪みが出来てしまうのか?
今回のコラムでは、その筋膜に歪みが出来てしまう原因についてお伝えしていきます。
具体的な治療方法については以前のコラムも合わせてご覧下さい。
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腱鞘炎を引き起こす筋膜の歪みの原因とは?
筋膜の歪みが起こるきっかけは大きく分けて次の5つが考えられます。
①骨折や怪我(外傷)、手術の有無
②日常や趣味などで頻繁に行う動きはあるか?
③仕事や生活上で長時間取る姿勢はあるか?
④ムチウチや交通事故の既往があるか?
⑤循環器、呼吸器、目や鼻の問題などがあったかどうか?
これらの事があると筋膜に歪みが生じる可能性があります。
一つずつ解説していきます。
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①骨折や怪我(外傷)、手術の有無
筋膜の歪みが生じる原因として特に重要になってくる項目です。
なぜなら「動かさない」事が最も筋膜に悪影響を与えるからです。
筋膜は動かさないでいると、筋膜が硬くなり歪みが生じます。
(厳密に言うと、筋膜を伸ばす機会が無いと、筋膜を構成するコラーゲン繊維が集まってきてしまい、コラーゲン同士のの隙間が無くなるために塊のように動きが悪くなってしまいます。そして筋膜の機能不全と各種センサーの機能不全を引き起こします。)
ですので、骨折や外傷によってギプスや装具、サポーターやテーピングなどで固定していた期間があると、その時に筋膜の歪みが生じてしまう可能性があります。
また骨折や外傷はそれ自体が筋膜にダメージを与えるため、これらの既往の有無は、治療部位の決定に重要な役割を果たします。
ただし固定をしなかったような軽微な外傷、あるいはすぐに痛みが消えた外傷などは除外します。
逆に何度も怪我をする(捻挫、脱臼など)ような部位は、筋膜の歪みによって引き起こされている可能性があり、また筋膜の損傷も強いため、原因としてはかなり重要事項になります。
同時になかなか治らなかった、長期に渡る怪我や痛みも重要です。
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手術はそれ自体が筋膜を切開するため、治癒の過程で癒着や歪みが生じます。
術後に固定しなければならない事も多く、やはり原因としてはかなり重要です。
このように「動かせない・不動」の状態が長く続いたり、筋膜自体に損傷が起こる出来事があると、筋膜を歪ませてしまう原因となります。
しかも次回のコラムでお伝えするその他の原因に比べても、筋膜の歪みに対する影響力はとても高い原因となります。
ですので、腱鞘炎とは全く関係ないと思っても問診の時に必ずお聞きする内容になります。
ちなみにこれらの事項は指や手首周りに限りません。
肘や肩や肩甲骨周りの場合でも原因となりますし、反対側の外傷などの既往が原因となる事も良くあります。
①の項目だけで長くなってしまいましたが、それくらい筋膜の歪む原因としては最重要な出来事になります。
ですが過去の事であり、一見腱鞘炎と関係ないように思えるため、以外と忘れている事もよくあります。
ですので関係ある無いに関わらず、過去のこう言った出来事については問診時にお話し頂くと、より効果的な治療につながります。
次回のコラムでは、その他の原因についてもお伝えしていきたいと思います。
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執筆者
三軒茶屋α整体院 院長
山﨑 智史(やまざき さとし)
保有資格
理学療法士・鍼灸マッサージ師
講習会参加歴
・筋膜マニピュレーション国際コース 全コース修了(延200時間以上)
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