内臓の不調も腱鞘炎の原因になる
これまで腱鞘炎の原因となる5つの「過去」のエピソードについてお伝えしてきましたが、今回のコラムで最終回です。
腱鞘炎の原因となる5つの「過去」エピソードとは、
①骨折や怪我(外傷)、手術の有無
②日常や趣味などで頻繁に行う動きはあるか?
③仕事や生活上で長時間取る姿勢はあるか?
④ムチウチや交通事故の既往があるか?
⑤循環器、呼吸器、目耳鼻などの問題などがあったかどうか?
があります。今回はこの⑤についてお伝えしていきます。
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⑤循環器、呼吸器、目耳鼻などの問題などがあったかどうか?
これだけ聞くと腱鞘炎と一体どんな関係があるの?と言われてしまいそうですね。
しかしなかなか治らない腱鞘炎はこう言った内臓や顔の感覚器(目耳鼻など)に問題がある事があります。
一つずつ順を追って説明していきます。
まず内臓や顔の感覚器の表面にも筋膜に覆われていて、それぞれの機能を調整する役割があります。
通常の筋膜が筋肉の出力を調整し協調的に働くようにする機能と同じです。
そしてその筋膜は体表の筋肉を覆う筋膜と連結しています。
そのため、内臓や顔の感覚器の不調があると、内臓を覆う筋膜に歪みが生じて、その歪みをカバーするように今度は体表の筋膜を歪ませてしまいます。
そして体表の筋膜の歪みが、末端部へと代償していくうちに、手首や指の筋膜の歪みを引き起こし、腱鞘炎の痛みが現れてくるのです。
ですので、これまでお伝えしてきた①〜④ようなエピソードが特にない場合、内臓や顔の感覚器に不調は無かったか、あるいは今もあるのか、そう言った事をお聞きします。
もし不調があった場合、それが根本的な原因で筋膜に歪みが生じ、腱鞘炎となっている可能性があるからです。
内臓や顔の感覚器の不調としては、
・循環器・・・高血圧、低血圧、頻脈など
・呼吸器・・・(小児)喘息、気管支炎など
・目・・・ドライアイ、眼精疲労、羞明、極度の近視遠視など
・耳・・・耳鳴り、難聴、(めまい)、耳の詰まり感など
・鼻・・・アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など
こう言った症状が、腱鞘炎の発症する前にあったなら、もしかしたら内臓や感覚器の不調による筋膜の歪みが原因かもしれません。
ちなみに腱鞘炎とは違いますが、体表の筋膜の歪みが原因で、内臓や感覚器の不調を引き起こす事もあります(逆のパターンですね)。
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重要なのは今の使い過ぎよりも「過去」のエピソード
これまで3回に渡って、腱鞘炎に影響を及ぼす「過去」のエピソードについてお伝えしてきました。
でもなぜ「過去」のエピソードが大事なんでしょうか?
それは、身体は痛みや不調を緩和するかのように、何らかの原因により生じたある部分の筋膜の歪みに対して、それをカバーしてバランスを取るように他の部位の筋膜を歪ませます。
このカバーにより悪い意味でバランスが取れるため、「過去」にあった痛みや不調もまるで治ったかのように感じます。
でもこれは治ったのではなく、他の部分でカバーしたに過ぎません。
表面上、痛みが無くなったという事です。
ですがその代償は、長い期間をかけてどんどん末端部まで行き、最終的に手や指周りの筋膜を歪ませてしまいます。
すると末端部ではその先でもうカバーする部分が無いために、筋膜の歪みが痛みとして現れてきてしまうのです。
これが腱鞘炎の起こる仕組みです。
こうした理由から、特に大事なのは腱鞘炎が起こる前の「過去」の出来事になってくるのです。
そのため根本的な原因(筋膜の歪み)を探し出すには、腱鞘炎が起こる前の出来事まで遡る必要があります。
もし腱鞘炎でお困りでしたら、過去にこのようなエピソードがあったか、一度思い返してみて下さい。
もちろんこれは関係あるのかな?という事もあるかもしれません。
しかし色々なエピソードの中から特に影響があると判断したものを参考にして、触診検査にて実際に確かめていきますので、思い当たる事はぜひお伝え頂けると治療がより効果的になります。
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執筆者
三軒茶屋α整体院 院長
山﨑 智史(やまざき さとし)
保有資格
理学療法士・鍼灸マッサージ師
講習会参加歴
・筋膜マニピュレーション国際コース 全コース修了(延200時間以上)
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