筋膜の構造とは?
これまでのコラムで、腱鞘炎の原因は腱や腱鞘ではなく「筋膜」にあるという話をお伝えしてきました。
筋膜に歪みがあると、筋膜に埋め込まれてある痛みセンサーなど各種センサーの誤作動が起こり、痛みを引き起こしている、というのが真の原因です。
今回のコラムでは筋膜の歪みというのは、実際どういう状態になっているのか、という事をお伝えして行きたいと思います。
その前にまずは筋膜がどんな構造になっているか説明したいと思います。
筋膜と言っても様々な種類がありますが、腱鞘炎の治療に重要になってくるのが、個々の筋肉を包んでいる「筋外膜(きんがいまく)」と、上腕や大腿などを丸ごと覆っているのが「腱膜筋膜(けんまくきんまく)」と呼ばれる筋膜です。
腱膜筋膜は3層の結合組織で出来ていて、3層それぞれの間にヒアルロン酸の層が存在します。
このヒアルロン酸があるお陰で、3層の筋膜が滑らかに動く事が出来ます。
腱膜筋膜と筋外膜の間にもヒアルロン酸の層があります。
そしてこの3層の結合組織の構成は、膜に強度と形態を与えるコラーゲン線維、形態記憶性と伸張性を与えるエラスチン線維という2種類の線維から成り立っています。
この剛と柔の2種類があるために、筋膜は伸び縮みしながらも姿勢や動きのコントロールに影響を与える事が出来るのです。
3層の結合組織の線維はそれぞれ違う方向に並んでいるため、3層重なると網目のように見えます。
この3層の間、そして腱膜筋膜と筋外膜の間にあるヒアルロン酸は潤滑油の役割があり、それぞれの層が自由に滑走できる仕組みを作り出しています。
個々の筋肉を包む筋外膜はある部分で腱膜筋膜と連結しており、腱膜筋膜も各部位を覆うだけでなく全身に渡って連結しています。
(例えば手や指の筋膜→前腕の筋膜→上腕の筋膜→肩甲帯の筋膜→体幹の筋膜というようにつながっています。)
このように連結しているため、例えば肘を曲げるという動作においても、筋膜を介して体幹から手までの各筋肉が協調的に作用して、一つの動きを生み出します。
ただ逆にこのどこかに筋膜の歪みが生じると、そこに出た痛みを解消するために、連結した別の筋膜を歪ませて、悪い意味でバランスを取ろうとしてしまいます。
そのため腱鞘炎の原因が実は体幹の筋膜にある、という事もよく見られます。
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筋膜の歪み
さて、筋膜の構造の説明が長くなってしまいましたが、ここから本題の筋膜の歪みについて説明していきます。
筋膜の歪みというのは2つの過程により発生します。
それは「基質のゲル化」と「ヒアルロン酸の凝集」です。
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①基質のゲル化
この過程から生じてしまう筋膜の歪みとは、コラーゲンとエラスチンの2種類の線維からなる結合組織の層に起こる変化(機能異常)です。
実はコラーゲン線維とエラスチン線維は隙間なく敷き詰められているのではなく、ある程度の空間があって、その空間には水分(ゼラチンのようなもの)で埋められています。
以前のコラムで、筋膜の歪みの原因には「不動」状態によって起こると説明しました。
固定などによる筋膜の不動状態、つまり伸張する機会が無くなると、このコラーゲン線維とエラスチン線維が偏ってしまい、一部で密度が高くなってしまいます(高密度化)。
すると線維の間の隙間が無くなり、水分が飛んでしまいます(脱水)。
そのためサラサラだったゼラチンようの水分が、まるでこんにゃくのように固まってしまいます(ゲル化)。
そうなってしまうと筋膜にはもはや柔軟性が無くなり、硬くなり、筋膜の機能を果たせなくなります。
これが一つ目の筋膜の歪みのメカニズムです。
ちなみに筋膜の「不動」が起こりうる原因は主に2つあり
①身体の固定(手術後や外傷後のギプス、サポーターなどによる固定など)
②日常での不良姿勢の維持
によって起こり得ます。
さて、ちょっと長くなってしまったので、もう一つのメカニズムについては次回のコラムでお伝えします。
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執筆者
三軒茶屋α整体院 院長
山﨑 智史(やまざき さとし)
保有資格
理学療法士・鍼灸マッサージ師
講習会参加歴
・筋膜マニピュレーション国際コース 全コース修了(延200時間以上)
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